今年度から、所有者が不明の土地建物や、管理不全の土地建物について、画期的な法改正がなされました。
1 所有者不明不動産の管理制度(令和5年4月1日施行)
ある地域を開発しようとしていたところ、その区域にある不動産の所有者が不明なために、開発が思うように進まないというケースがあります。
また、所有者不明の空き家についても増加傾向にあります。この点、空き家については、空家対策特別措置法が施行されていましたが、あくまで行政の動きに委ねるしかありませんでした。
なお、法改正前にも、所有者が所在不明なら「不在者財産管理人」、相続財産なら「相続財産管理人」、解散した会社なら「清算人」を裁判所から選任してもらうことで対応することも可能といえば可能でした。
しかし、上記の制度はいずれも、その不在者や解散会社全体を管理する制度になっており、例えば隣地の土地だけについて管理してほしいという個別ケースだけを対象とすることはできず、不在者等の財産全体を管理するというやや面倒な制度でした。(なお、清算人については、いわゆるスポット清算人というかたちで、事実上特定の不動産だけを取り扱う運用がなされてはいましたが、今回の法改正でその特別な運用も不要になりました)。
今回の法改正では、所有者不明土地がある場合、ある特定の土地を対象にして、利害関係人の請求により、裁判所が管理命令を発令することで、弁護士等の管理人が選任され、その管理人が管理処分することが新たにできるようになりました(改正民法264条の2以下)。
この制度を活用することで、不動産取引が従前より円滑に進むようになるかと思われます。
2 管理不全不動産の管理制度(令和5年4月1日施行)
土地や建物といった不動産問題については、上記のように所有者が不明な場合だけではありません。
所有者がわかっていても、近隣の土地や建物がゴミで溢れて不衛生で悪臭が漂っていたり、建物が老朽化して倒壊しかねないリスクがあったり、樹木が生い茂って越境しかねないのに、所有者が適切な管理をしてくれないために困っているというケースがあります。
このような管理不全の不動産問題については、従来は物権的請求で訴訟を提起するしかありませんでした。
しかし、法改正により、利害関係人の請求により、裁判所から弁護士等の管理人が選任され、管理人において適切に管理処分することができるようになりました(改正民法264条の9以下)。
また、本改正と併せて、空家対策特別措置法も改正がなされ(令和5年6月14日公布)、管理不全の空き家については、地区町村から指導・勧告がなされた場合、固定資産税の住宅特例が解除され、固定資産税が6倍になるようになります。この改正は公布から6か月以内に施行が予定されているため、住んでいない空き家を所有されている方は、売却や修繕など、早めに対策される必要があるかと思われます。
所有者不明の土地建物や管理不全の土地建物に悩まれているときには、上記の新制度を利用することで解決することが可能となりましたので、不動産開発や隣地問題でお悩みの方は、ご相談ください。
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